社会保障審議会・介護保険部会で12月20日、2024年度に向けた「介護保険制度の見直しに関する意見」がまとめられた。ケアマネジメントに関しては複数のことが示されたが、今回は、居宅介護支援事業所に介護予防支援の指定対象を拡大する方針について考えたい。【石山麗子】
おそらく多くの方の関心は、「すべての居宅介護支援事業所が介護予防支援を行わなければならないのか」であろう。
残念ながら現時点で詳細は示されていない。「見直しに関する意見」に記載される情報の粒度は、元来そういうものだ。大枠を示し、詳細はこれからの議論となる。
筆者の予想は“手上げ方式”である。希望する事業所だけが、指定介護予防支援と指定居宅介護支援の2枚の看板を掲げることになるとみている。となれば、“手上げ”に値する魅力ある改正になるのだろうか。2つの観点から考える。
現在、地域包括支援センターから依頼される介護予防プランの受託件数が伸びない理由の1つに、基本報酬の額がある。もし改正後も現在と大差がなければ、事業者にとっては、指定介護予防支援になることで今より不利な状況も生じ得る。
例えば、依頼された介護予防支援のケースは、正当な理由がない限り受け入れを拒めなくなる。また、仮に指定介護予防支援事業所として申請する事業所数が地域に少なければ、地域包括支援センターからの新規依頼が集中するかもしれない。
ケアマネジャーの採用が難しい今日、業務負担にも配慮しなければ離職・採用不振など経営上のリスクにも繋がりかねない。
さかのぼれば2005年の制度改正で、それまで居宅介護支援事業所で作成していた介護予防プランは、地域包括支援センターが担うことになった。今般の「見直しに関する意見」では、「地域包括支援センターの一定の関与を担保したうえで」との考え方が示されたものの、実質的に居宅介護支援事業所に逆戻りである。
地域包括支援センターの職員にとって、介護予防支援とはどのような位置付けなのだろうか。
調査結果によれば、総合相談支援業務については、負担観は覚えるが極めて重要な業務である、との認識を持っている人が多い。他方、介護予防支援はさほど重要性を感じておらず、業務の負担と捉えている人が少なくないようだ。
制度の流れを振り返れば、地域包括支援センターが大変だから、介護予防支援は重要度が低いから、居宅介護支援事業所でやってくださいよ、という理屈は通らない。
筆者は、要介護者のケアマネジメント実践を熟知しているケアマネジャーであればこそ、軽度者の将来像をリアルに予測できると思っている。ケアマネジャーには、その知見を活かして、軽度者に対して早期から予防的観点で手腕をふるうことを期待している。専門性の高さが評価されれば、追って相応の報酬の額も主張できるだろう。
引用:社会保障審議会・介護保険部会 第101回参考資料P183 地域包括支援センターの業務の負担感(R4調査中間集計)
原典:令和4年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「地域包括支援センターの事業評価を通じた取組改善と評価指標のあり方に関する調査研究」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社) アンケート結果(令和4年9月13日時点で回答があったものの中間集計)