6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ〜課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現〜」(骨太方針2022)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。【石山麗子】
ケアマネジャーや介護職にとって介護保険制度改正は、とても身近なものですが、骨太方針に直接触れる機会は少ないのではないでしょうか。
とはいえ骨太方針は、政府全体に関わるものですから、ここに書かれている内容は次期介護保険制度改正に何らかの形で影響することは確かです。そこで今回は、骨太方針の動向について確認しましょう。
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骨太方針は2001年の小泉政権時代に始まり、例年、初夏に閣議決定されます。
近年の介護の記述には変化がみられます。例えば介護という用語の出現回数です。コロナ禍前の2019年は53回ですが、2022年度は14回でした。約1/4に減少しています。
介護の重要性はそれほどまでに低下したのでしょうか。では、2019年と2022年の介護に関連する主な内容を筆者なりに抜き出しましたので、確認してみましょう。
■ 2019年
◯ 疾病・介護の予防
◯ 医療・介護制度改革、サービスの生産性向上・効率化
◯ 科学的介護の推進
◯ 介護人材の確保・処遇改善
◯ 電子カルテの標準化と介護情報の連携
◯ 保険者機能の強化による1人当たり介護費の地域差縮減
◯ 育児・介護があっても能力を発揮できる働き方改革
■ 2022年
◯ デジタルヘルス活性化、医療介護分野でのDX技術革新を通じたサービスの効率化・質の向上
◯ 包括的データ戦略に基づく医療・介護、教育、インフラ、防災にかかるデータ・プラットフォームの早期整備
◯ 経営状況に関する全国的な電子開示システム等整備による経営実態の透明化、経営の大規模化
◯ 良質なテレワーク・職業選択の幅の拡大に伴う選択的週休3日制度の子育て、介護等での活用
2019年に比べて2022年はデジタル、電子、DX、オンライン、データという言葉がちりばめられています。デジタル庁も創設され、いよいよ各所にデジタル化をベースとした連携が促進されるでしょう。
対象領域にも変化がみられます。特徴は医療・介護という文脈にとどまらず、インフラ、教育、防災などに拡大した間口の広さです。つまりマジョリティである高齢者支援だけでなく、あらゆるライフステージ、立場の人を『包摂』するという概念に移行しました。『DX×包摂』は、主に介護保険に属して活動する私たちにとっては想像を超えた新たなイノベーションをみせてくれるかもしれません。
このような骨太方針2022の流れを汲み、次期介護保険制度改正の議論は、社会保障審議会・介護保険部会で、夏以降一層具体化されていきます。少なくとも居宅系でのLIFE(科学的介護情報システム)導入は検討されるでしょうし、介護の周辺領域とのデータ連携も視野に入れたケアの質、災害時等対応、生産性向上、経営実態の透明化等の議論も活発化するでしょう。
ポストコロナの『新しい日常』ではデータから見えること、人でなければ気付けないこと、こうした両方の価値が融合していきます。ケアマネジメントへの期待は一層膨らみます。