2025年4月16日
昨年度の訪問介護の倒産、過去最多を記録 9割超が小規模 崩れゆく在宅の最前線


「国の支援拡充がなければ今年度も倒産増は避けられない」。そう警鐘を鳴らしている。【Joint編集部】
東京商工リサーチは16日、介護事業者の倒産の動向を明らかにするレポートを新たに公表した。今年1月に昨年1年間の動向を報告していたが、今回は昨年度(昨年4月から今年3月)の動向をまとめたもの。
それによると訪問介護の倒産は86件。前年度から21.1%増加し、過去最多を大幅に更新した。
多くの関係者が目を疑った基本報酬の引き下げから1年。あの判断は妥当だったのか、と疑う声は今も業界を覆っている。厚生労働省は補助金などの支援策を打ち出しているが、サービス提供体制を守る効果が出るかどうかは不透明だ。
昨年度の介護事業者の倒産は全体で179件。こちらも過去最多となった。訪問介護は約半数を占めており、その多さが際立っている。

大半は小規模な事業者だ。訪問介護の86件の倒産のうち、職員10人未満のところは93.0%だった。地域の高齢者を支えている事業所の苦境がうかがえる。
倒産が増えた要因としては、深刻な人手不足や人材獲得競争の激化、物価の高騰、コロナ禍のダメージなどがあげられる。経営環境の厳しさが増すなか、基本報酬の引き下げが追い打ちをかけたという見方が根強い。集合住宅などの高齢者を効率的に支える大手の事業者が、ヘルパー争奪戦で優位に立っているとの指摘もある。
東京商工リサーチは、「零細事業者の淘汰が進行している」と分析。「人手不足の解消や運営の効率化が求められるが、事業者単体での対応には限界がある」と問題を提起した。