【村上久美子】介護職の賃上げ、国はまず目指す水準と期限を示せ 崩壊を止める覚悟を


今年の春闘は、昨年にも増して勢いがある。【村上久美子】
連合によると、2025春闘の平均賃上げ率(3月19日現在)は5.40%、中小組合4.92%と、2年連続5%を超える高水準で推移している。国が推し進める「労務費の適切な価格転嫁」が順調に進んでいるということだろう。
◆ 置き去りにされる介護職
では、介護業界の実態はどうなっているのか。
3月18日、厚生労働省は2024年度介護従事者処遇状況等調査の結果を公表した。それによると、平均給与額は前年比4.3%増、月33万8200円であった。
政府は昨年の介護報酬改定で、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップへとつながるよう、処遇改善加算の拡充・一本化などを実施した。
今回の調査結果によると、加算の全額を2024年度の賃上げに充てた事業者が80.7%を占めていた。こうした事業者は、1年間で厚労省が考えていた2年分の賃上げの原資をすでに使ってしまったことになる。
案の定、UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)の今年の賃上げ状況(*)を見ると、体力のある大手事業者以外、賃上げ率は2.0%に遠く及ばない数字となっている(注)。
* 現在回答がある事業者のみ
注)この記事では配信当初、掲載時のJoint編集部の誤りで、「体力のある大手事業者以外は賃上げ率が2.0%にとどまる」と記載しておりました。正しくは、「体力のある大手事業者以外、賃上げ率は2.0%に遠く及ばない」でした。お詫びして訂正致します。この記事は訂正後の記事です。
昨年のNCCUの賃金実態調査では、介護従事者の平均賃金と全産業の平均賃金との格差は月約6万5千円となり、3年連続で拡大したことが分かった。処遇改善加算などの施策によって、介護業界も少しずつ賃上げが進んでいるものの、その規模もスピードも全く足りないのが実情だ。
◆ 制度崩壊を防ぐために
今後、他産業の賃上げが現在のペースで進んでいけば、賃金格差がさらに拡大することは容易に想像できる。このままでは、介護分野からの人材流出が止まらなくなり、国が描く「2040年には介護職員約272万人」というロードマップは達成できない可能性が高い。
そうなれば、介護難民とともに介護離職者も増加するだろう。他人事ではない。自分自身が介護を必要としたときに、介護をしてくれる人がいない、という現実がもうすぐそこに迫ってきているのである。
介護保険制度は、介護従事者の不足から制度の崩壊が始まっているということを、いまこそ真剣に考えるべきである。政府はまず、介護従事者の賃金についてあるべき水準をはっきり示し、それをいつまでに達成するのかということを明確にする必要がある。
そのうえで、より具体的に時限を定めて賃上げに取り組むことが、介護保険制度の崩壊を防ぐことにつながるのではないだろうか。