悪いのはイメージ? 介護職の魅力発信で難局を打開せよ 取り組み続々
介護職の悪いイメージを払拭して人材確保につなげよう。
そんな取り組みを国や自治体、企業などがそれぞれの立場で進めている。専門家は、「処遇改善とセットでイメージアップに取り組む意義は大きい」と指摘する。【Joint編集部】
◆ 行政が広報などに注力
例えば兵庫県明石市。福祉の仕事の魅力を多くの人に知ってもらおうと3本のドキュメンタリー動画を作り、YouTubeなどで配信を始めた。
動画一覧はこちらのサイトから→
福祉の現場や高校の福祉科、映像・音楽制作のプロらと連携。難しい制度の説明をあえて避けるなど、視聴者の心に響きやすいコンテンツ作りに力点を置いた。
明石市は、「新しい視点の動画。世間一般のイメージ通りではない現場の楽しさ、やりがいなどを伝えたい」とPRしている。
国も新たな広報事業を始める。これまでもイメージアップには取り組んできたが、今回は人手不足が特に深刻な訪問介護に焦点を絞った。
厚生労働省は今年度の補正予算で、およそ8千万円の財源を確保。ホームヘルパーの魅力・やりがいを伝えるポスターや動画などを作り、これから介護業界を目指す人や学生らに訴えていく方針だ。
◆ SOMPOケアがまんがを制作・寄贈
人材を十分に確保できるかどうかは、介護事業の成否を左右する死活問題にほかならない。このため、イメージアップには企業も力を注いでいる。
業界最大手のSOMPOケアは、講談社ビーシーの「まんが社会見学シリーズ」で学習まんが「大研究! 笑顔をつなぐ! 介護の仕事」を制作。昨年11月、全国の約2万の小学校、約3千の公立図書館などに順次寄贈すると発表した。
まんが「大研究! 笑顔をつなぐ! 介護の仕事」はこちらから→
狙いは「介護職に対する従来のイメージを変え、子どもたちが憧れる職業にしていくため」。介護職の“3K”を「変えていく」「価値ある」「感動できる」の“New3K”に変革し、魅力の向上につなげたいとしている。
イメージアップの取り組みは果たして、本当に人材の確保につながっていくのか。専門家に話を聞いた。
淑徳大学・総合福祉学部の結城康博教授は、「介護職の給与水準が低いのは厳然たる事実。そこから目を背けてはいけないが、例えば飲食や美容など他のサービス業と比べて極端に低いかと言えば、必ずしもそうでない職場は少なくない」と説明。「介護職に実態より悪いイメージを持っていたり、仕事の魅力に気づいていなかったりする人は多い。賃上げや負担軽減、職場環境の改善を優先すべきだが、これらとセットでイメージアップに取り組む意義は大きい」と述べた。