政府は介護保険と同様に、75歳以上の後期高齢者医療制度でも保険料の見直しに向けた検討を進めている。8日には共同通信が、高所得者の年間上限額を80万円程度へ引き上げる方向で調整に入ったと伝えた。
そもそも、後期高齢者医療制度の財政はどうなっているのか、保険料はどのように設定されているのか、見直しの狙いはどこにあるのか、ここで改めてまとめた。【Joint編集部】
後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者の医療費を社会全体で支えていくことを目指すもの。国や自治体の公費、国民の保険料、患者の窓口負担を財源として運営されている。このうち窓口負担を除いた給付費は、概ね公費50%、保険料50%で賄われている。
給付費の50%を賄う保険料は、現役世代と高齢者の双方で負担を分かち合う決まり。所得の高い現役世代が概ね40%を、高齢者が残りの10%を支払っている。ただし、この割合は現役世代の人口の減少に合わせて調整されていく。パイが大きくなる高齢者の負担割合が徐々に上がっていく仕組みで、今年度は11.72%となっている。
高齢者の保険料は、都道府県ごとに個人単位で割り振られる。改定は2年に1度で、今年度の1人あたりの平均は月額6472円だ。
具体的な金額を定める際の軸は2つ。皆で平等に負担を分かち合おうという「均等割」と、経済状況の差に目を向けようという「所得割」を組み合わせる。生活に余裕のない人は「所得割」の部分が少なく、「均等割」の部分も2割免除、5割免除、7割免除と軽減されていく。一方で恵まれている人の場合、「所得割」の部分が負担能力に応じて上がっていくことになる。
もっとも、高所得者の負担も青天井ではない。際限なく徴収することにならないよう、年間の保険料に上限額が設けられている。現行の上限額は66万円。厚労省によると、この上限額に達している後期高齢者は全体の1.29%(今年度推計値)だという。共同通信は8日、この66万円を80万円程度まで引き上げる案が議論されていると報じた。
制度が発足した2008年度、高所得者の保険料の年間上限額は50万円だった。この14年間で段階的に16万円引き上げられてきたが、政府は更に追加的な施策も検討している。背景にあるのはやはり、急速な少子高齢化と厳しい経済状況だ。
後期高齢者の医療費は、今年度の予算ベースでおよそ18.4兆円。右肩上がりで推移しており、高齢化が加速度的に進む今後は更に膨張していくとみられる。
一方、現役世代の人口は急激に減少していく。人口動態に応じて調整する仕組みはあるものの、これから個々の負担が一段と重くなっていくのは避けられない。現役世代は賃金も十分に上がっておらず、子育て世帯を中心に生活に余裕のない人が多い。企業や保険者などからも、「負担は既に限界にきている」と警鐘が鳴らされている。
政府が保険料の見直しを検討するのは、生活に余裕のある高齢者に相応の負担をしてもらうことが目的。高齢者どうしの再分配機能を強化しつつ、現役世代の負担が重くなり過ぎないようにする狙いがある。