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2025年1月20日

【熱視線】ワークサポートケアマネの現在地 パイオニアが広げる活躍の場

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《 日本介護支援専門員協会・七種秀樹副会長 》

介護を必要とする高齢者、ケアラーの家族とその仕事、そして勤め先の企業をつなぎとめ、みんなが好循環を作れるように下支えする。そんな社会の潤滑油のような役割を、きっと誰かが担わなければならない。【Joint編集部】

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ワークサポートケアマネジャーへの関心が高まっている。今の社会情勢を踏まえると、これはごく自然な現象だと言わざるを得ない。


介護の提供体制は脆弱化し、拡大する高齢者・家族のニーズをカバーしきれていない。在宅サービスが行き届かない地域が増えていることは、現場の関係者にとって周知の事実だ。


一方、人手不足は業界を問わず日本全体の重い課題となった。貴重な人材の介護離職を防ごうという熱が強まり、企業の温度にも変化が生じた。仕事と介護の両立を支援する専門家は今後、誰かの希望の光となるべく活躍の機会を広げるとみられる。

【ポイント】ワークサポートケアマネジャーってなに?


◯ 仕事と介護の両立を実現するため、働く人、雇う企業の双方に必要な支援を提供するケアマネジャー。


◯ 日本介護支援専門員協会の認定資格。必要な研修は4日間、約18時間。主任ケアマネジャーであることなど受講要件あり。


◯ 会社員への情報提供・相談支援、企業の介護離職防止策の企画・運用、介護保険に関するセミナーの開催、介護現場での家族支援など幅広い役割がある。


→ 詳しくは日本介護支援専門員協会の公式サイト

ワークサポートケアマネジャーを取り巻く環境は今どうなっているのか? 日本介護支援専門員協会を訪ね、話を詳しく聞くことにした。


取材に応じた七種秀樹副会長は現状を、「全国各地でパイオニアが“ゼロをイチに変える挑戦”をしている」と説明。「ケアマネジャーの活躍の場が、介護保険の枠を超えて広がっていることを知ってほしい」と語った。

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◆ 収入源拡大を目指す人も


  −− ワークサポートケアマネジャーへの関心が高まっていると聞きました。

《 日本介護支援専門員協会・七種秀樹副会長 》

支援ニーズは確実に存在しており、今後さらに高まると考えています。


実際、大小の企業から介護離職に関する相談を受けることも珍しくありません。解決策を模索する動きが、それぞれのレベルで少しずつ広がっています。年間で約10万人が介護離職に至っているというデータもありますから、企業がこの問題に関心を寄せるのは当然かもしれません。


我々は現在、年間でおよそ100人から120人ほどのワークサポートケアマネジャーを養成しています。応募者は多く、短期間で定員に達する状況が毎年続いています。企業だけでなく、介護支援専門員の関心も高まっているのではないでしょうか。


  −− 新たな収入源を得ようというケアマネジャーもいるのでしょうか?


そうした思いで研修を受講する方もおられます。居宅介護支援の事業経営を安定させること、介護支援専門員の収入を増やすことは重要で、ワークサポートケアマネジャーを養成する意義にはこれらも含まれます。


当然、企業への支援などで得た報酬は居宅介護支援事業所、あるいはケアマネジャーがそのまま得られるもので、協会に一定額を納めるような仕組みは一切ありません。専門性を活かして収入を増やす1つの手段、と捉えていただいても差し支えないでしょう。

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◆ 生まれた新たなフィールド


  −− ワークサポートケアマネジャーが活躍する事例も出てきたようです。


養成開始からおよそ3年。今はまだ黎明期で、パイオニアが全国各地で新たな取り組み、“ゼロをイチに変える挑戦”に汗をかいているところです。


徐々に好事例も出てきました。例えば企業への働きかけをきっかけに、実際に依頼を受けて支援活動を展開している人がいます。感度の高い自治体も動いており、ワークサポートケアマネジャーを企業に派遣する事業を始めたところもあります。


昨年秋の協会の全国大会では、当のワークサポートケアマネジャーが実践例を紹介するセッションが開かれました。登壇者はそれぞれ「こういう道もある」と語り、関係者に気付きを与える機会となりました。


それぞれの能力、専門性を活かして新たなフィールドで活躍するケアマネジャーが誕生しています。ケアマネジャーの活躍の場が、介護保険の枠を超えて広がっていることを是非知っていただきたいです。

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◆「中学校区に1人は」


  −− 今後、ワークサポートケアマネジャーの養成を加速させる流れでしょうか?


当面は、年間100人から120人という今の規模を維持して着実に養成していくことになりそうです。運営側のリソースの問題もあり、無理に増やすと研修の質の担保が難しくなるためです。


ワークサポートケアマネジャーが仕事で関わるのは一般企業の幹部や社員の皆様で、その信頼を得るためには専門性が欠かせません。このため、受講者の負担が重くなりすぎないように配慮しつつも、質が担保された研修の実施に努めていくつもりです。


ワークサポートケアマネジャーを一気に増やすのは現実的ではありませんが、ゆくゆくは、少なくとも中学校区ごとに1人は配置できるようにしたいと考えています。どの地域でも適切な支援を受けられる環境ができたら、今より更に良い社会になると思いませんか。


ワークサポートケアマネジャーには、地域の他のケアマネジャーの相談にものる中核的な存在、ロールモデルになってほしいと考えています。中学校区ごとにこうした人材がいれば、地域全体の介護基盤がより強化され、介護離職の課題に取り組む力も強まるでしょう。


  −− ワークサポートケアマネジャーの普及・浸透に向けてどんなことに取り組みますか?


企業の認知度や役割の理解が、まだまだ十分ではないと感じています。今後、更にPRを強化することが重要になってきます。


地道な活動を続けているワークサポートケアマネジャーが全国各地にいるので、そのことをもっと広く知っていただきたい。皆さん介護離職への問題意識はお持ちですから、情報発信を積極的にすればきっと届くことでしょう。ケアマネジャーの新しい姿を、もっともっとPRしていきたいと思います。


協会では既に、企業からの問い合わせに対応する窓口を設けているほか、地域のワークサポートケアマネジャーを紹介する仕組みも整備しています。企業が必要に応じてワークサポートケアマネジャーにアクセスできる環境の整備は重要で、今後も力を入れていく方針です。


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