「ヘルパーさんって何をしてくれるんですか?」。ご利用者・ご家族から契約時に多く聞かれることです。まだまだ世間の方々には訪問介護が知られていないな、と痛感する場面です。【黒澤加代子】
◆ 横行していた「やりすぎヘルパー」
「自立支援、重度化防止、日常生活の支援です」などとご説明しても、なかなかご理解はいただけません。「お掃除をやってくれればいいから」「買い物に行ってくれればいいから」「自立支援はいらないわ」などとよく言われます。ケアマネさんに「とりあえず入ってくれればいいから」との依頼を頂くことさえありました。
2000年の介護保険制度の開始当初、1回の訪問は2時間が主流で「家事援助」も多くありました。訪問介護イコール家事援助。そんな風に勘違いしていた時代です。
やりすぎヘルパーさんが横行し、「そこまでピカピカにしなくても!」「10品も調理しなくても!」と驚くことが多々ありました。こうしたヘルパーさんはご利用者の評価も高く、「◯◯さんはここまでやってくれた!」という言葉も飛び交っていたんです。
当時、20代のサービス提供責任者だった私は、「訪問介護ってムズカシイ」と振り回される毎日でした。
◆ コロナ禍もきっかけに
しかし、社会の変遷を経て状況は変わりました。今は30分訪問のケースが増え、1日に多くて8件もの訪問をこなすようになっています。より効率的に回らなければならず、短時間で最大のケアを提供することが求められるようになりました。
「これは対応してもいいですか?」。やりすぎヘルパーさんは確認ヘルパーさんに変身。サービス提供責任者も徐々に介護福祉士の独占職種となってきて、訪問介護の専門性が以前よりかなり確立されていると感じます。
コロナ禍の影響も大きかったです。「うつされたくない」との理由で何ヵ月もお休みされたご利用者がいた一方、本当にサービスが必要な方がトリアージされていました。
感染症が蔓延する中で、本来の訪問介護が真に必要な方にはケアをお届けし続けたこと、本当はヘルパーがやらなくてもいい支援は保険外サービスで代替できると気付いたことなどが、訪問介護に対するイメージを変えるきっかけになったと思います。
◆ 問われるサ責の見立て力
介護サービスの中で有資格者しか従事できないのは訪問介護だけです。ヘルパーの養成課程は、ピカピカにするお掃除や豪勢な調理を専門に修得するものではありません。地域資源や社会資源を多く学び、その中で介護の専門性をどのように活かしていくかが問われます。
訪問介護の事業所やヘルパーは、ご利用者に対してどんな役割を果たす存在なのか。そのことを明確化する提案を、サービス提供責任者らももっとできるようにならないといけません。
2018年度に明確化された「老計第10号」は、訪問介護のエビデンスの1つです。サービス提供責任者やケアマネさんの中にも、まだ「知らない」と言われる方が少なくありません。まだまだ周知不足だと歯ぎしりしています。
以下の身体介護1-6が、私たちヘルパーがご利用者宅に訪問する際の重要な心得となっています。
身体介護1-6
自立生活支援・重度化防止のための見守り的支援(自立支援・ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)
私たちはなんでもやる家政婦ではありません。それは本当にヘルパーが対応していいものなのか、やりすぎではないか、公的な社会保障制度の給付を適用すべきことなのか。サービス提供責任者の見立て力が試されています。
先日ご利用者と話している時に、「あなたたちヘルパーさんは、ただ家に来てお掃除するだけじゃなくて、顔色を見て、話をして、声を聞いて、今日は体調どうかなってみていくのも仕事でしょ。私を見て体調がバレるから、あなたには嘘をつけないわ」と言われました。むしろ、ご利用者の方が訪問介護の仕事を適切に理解してくださっているのかもしれません。