政府、補正予算で介護職員に一時金支給 1人5.4万円規模 生産性向上が要件 居宅ケアマネは対象外
政府は29日、新たな総合経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案を閣議決定した。【Joint編集部】
介護職員の賃上げ、職場環境の改善に向けた補助金を新たに支給する方針を打ち出した。
その財源として806億円を計上。常勤の介護職員1人あたり、およそ5.4万円の一時金を支給できる規模とした。
これで他産業との給与格差を縮小しつつ、人材の定着や離職の防止などにつなげたい考え。国会で野党から「不十分」といった批判が噴出しそうだ。
政府が新たな補助金の支給対象としたのは、今年度の介護報酬改定で拡充・一本化された処遇改善加算を取得している事業所・施設。今回も居宅介護支援などは対象外とされた。
補助金の使途は事業者の裁量に委ねられる。多職種の賃上げ、職場環境の改善などの経費に充てることも可能だ。このため、1人あたりの一時金の額は事業所・施設ごとに異なることになる。
補助金の支給要件は、介護現場の業務の棚卸し、効率化に向けた課題の見える化などに取り組み、職員の負担軽減の方策を立案すること。人材確保がますます難しくなる今後を見据え、政府は賃上げとセットで生産性向上を前に進めることにこだわった。
厚生労働省は支給要件の細部をこれから詰める。処遇改善加算の上位区分の取得要件などと重なるように設計し、その算定率の向上につながる仕掛けとする方向で検討する。
補正予算が政府案通りに成立すれば、補助金の要綱やサービスごとの交付率などを速やかに示す構え。これまでと同様に、事業所・施設が計画書や実績報告書を都道府県に提出する制度とする。
厚労省の関係者は、「できるだけ現場に負担がかからない仕組みとなるよう十分に配慮する」と説明。「補助金をなるべく早く事業所・施設へ届けられるよう尽力する」と話した。
補助金の支給が始まる時期はまだ不透明。都道府県ごとの違いも生じる見通しだ。
今後、こうした補正予算案の是非は臨時国会で論じられる。例えば立憲民主党は、一時金ではなく恒久的な賃上げの実現に向けた独自の法案を提出する。こうした対案に光が当たり、政府案の修正などを求める議論が活発化するかどうかが焦点だ。