2024年11月16日
「処遇改善だけで介護人材不足は解決しない」 埼玉県立大・田中理事長
全国老人保健施設協会の主催による「全国介護老人保健施設大会」が、14日から15日にかけて岐阜市で開催された。【Joint編集部】
介護報酬を議論する国の審議会の会長など、これまで多くの要職を歴任してきた埼玉県立大学の田中滋理事長が講演。2040年を展望した介護サービス提供体制のあり方や課題などを語った。
深刻な人材不足に言及し、「介護業界だけの問題ではない。日本中の全ての分野が人材不足になっている」と改めて強調。「他の分野の人材を引き抜いて介護業界に来てもらう、というのはもう限界。介護職の処遇改善、負担軽減は絶対に必要だが、それだけで問題は解決しない」との認識を示した。
田中氏は講演で、介護職がこれまで継続して増えてきたことを改めて紹介しつつ、人材数が減っている分野も少なくないと説明。「介護事業所・施設は離職率も低下している。介護業界をうらやましいと感じる分野もある。介護業界の人材不足の要因は、介護ニーズの拡大によるところが大きい」と述べた。
そのうえで「これ以上、介護分野で人材を獲得し続けるのは大変厳しい。個人的には多くの人に来てもらいたいが、成長産業を含む他の分野で働く人が減ることにもつながる。日本の経済力が低下すれば介護費も賄えない」と指摘。介護業界の既存の人材を大切にすること、生産性向上を推進することなどの重要性を訴えた。