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2024年11月6日

訪問介護事業者の倒産が急増 10月までで過去最多更新 識者の見解は 進む新陳代謝 介護難民増の危機感も

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※ 画像はイメージ

経営が立ち行かなくなる訪問介護事業者が急増している。【Joint編集部】

東京商工リサーチが6日に発表した調査レポートによると、今年の倒産件数は1月から10月で72件。まだ11月、12月を残しているが、既に年間の過去最多を更新した。

要因は複合的でケースごとに異なるが、人手不足の深刻化、ホームヘルパーの高齢化が大きい。事業者の人材の争奪戦が激化しているほか、他産業の賃上げで競争環境は更に厳しくなっている。


そこに物価高騰に伴うコスト増、コロナ禍に起因する資金繰りの悪化なども重なった。基本報酬が引き下げられた今年度の介護報酬改定も影響したとみられる。


倒産した訪問介護事業者の大半が中小零細(*)。東京商工リサーチは、「小規模事業者の淘汰が加速している。支援が行き届かなければ、倒産増に歯止めはかからないだろう」との見方を示した。

* 資本金1千万円未満が84.7%、職員10人未満が94.4%。

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こうした大きな動きは、新陳代謝が進んで業界が変容していることの現れでもある。一方で、必要なサービスを十分に受けられない“介護難民”の増加を懸念する関係者も非常に多い。


訪問介護事業者の倒産の急増をどうみるか。その要因・背景、現場で起きていることなどについて、3人の有識者に話を聞いた。

◆ 東洋大学福祉社会デザイン学部・高野龍昭教授の話


訪問介護事業者の倒産が増加している要因を、今年度の基本報酬のマイナス改定のみに結びつけて考える意見も出ているが、それは浅薄に過ぎる。報酬改定からまだ半年ほどしか経過しておらず、倒産増加をそれだけで説明することはできない。


実際には、生産年齢人口の減少に起因する人材確保難によって事業を継続できなくなったケースや、生産性向上の取り組みの遅れなど事業者の運営・経営体制に起因するケースが多い。


また、都市部を除けば多くの地域で要介護高齢者の人口が横ばいから減少に転じている。このため利用者の確保が難しくなったり、高齢者向け住宅の併設事業所に利用者を奪われたりして、経営不振に陥っているケースもある。


このように考えてみると、事業者には、事業継続のための大規模化や生産性向上の推進など、経営の効率化が一層求められる。

◆ 日本ホームヘルパー協会東京都支部・黒澤加代子会長の話


倒産だけでなく廃業・閉鎖も増えている。ヘルパーの高齢化・人材不足が大きい。都市部の状況も悪いが、地方ではより深刻な地域がある。


集合住宅に併設されている事業所が、もともと少ない人材を多く集めていることも無視できない。こうした事業所は、地域に点在する高齢者宅を訪ねてサービスを提供する事業所と比べて、給与水準や職場環境が良いところが多い。酷暑・酷寒や台風などの辛さも緩和される。


結果、地域に根ざした事業所がより厳しい状況に追い込まれている。人材不足で必要なサービスを提供できないケースが多く、やむを得ず施設入所となる利用者も増えてきた。ヘルパー不足で高齢者の在宅生活の維持が困難になっている。


ヘルパーの給与水準や職場環境を改善できる基本報酬の引き上げが欠かせない。特に、集合住宅に併設されている事業所とそうでない事業所を分けて考えて頂きたい。この2つは事業モデルが全く違う。このままでは地域の介護難民が増えていく一方だ。

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◆ 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー・田中紘太代表の話


倒産の急増は事業者間の格差、2極化が進んでいることの現れではないか。


ICTの有効活用、職場環境の改善などに注力して多くの人材を採用し、事業を拡大できている事業者がいる。一方、ヘルパーを確保できずに事業の継続が難しくなっているところもある。


人手不足は日本全体の課題。生産性向上が強く求められるなか、介護業界でも適者生存の新陳代謝が進んでいる。こうした動きは今後も続くのではないか。


ヘルパー不足の深刻度は地域によって大きく異なる。ケアマネジャーがケアプランを作る際に、対応できる事業者がおらず必要なサービスを入れられない事態も生じている。こうした地域を中心に、介護難民を増やさない対策を早急に講じる必要がある。


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