厚生労働省は現在、ケアマネジメントをめぐる様々な課題について有識者の検討会で議論を深めています。この中では、主任ケアマネジャーの役割や人材確保なども論点の1つとして取り上げられています。
そこで今回は、主任ケアマネジャーのあり方、その制度の見直しについて改めて考えてみたいと思います。【田中紘太】
筆者も現在、主任ケアマネジャーとして居宅介護支援事業所の管理者を務めています。主任ケアマネジャー研修を2016年に修了し、主任ケアマネジャー更新研修も一度修了しました。来年には、2回目の更新研修を受講する予定です。
皆さんもご存じの通り、居宅介護支援事業所の管理者要件は2021年度から主任ケアマネジャーに限定されました。事業所を新規で開設する場合、管理者が主任ケアマネジャーでないと指定は受けられません。
一定の経過措置も設けられました。既存の事業所は2027年3月まで、管理者が主任ケアマネジャーでなくても事業を続けることができます。
◆ 止まらぬ事業所数の減少
ここで問題となるのが、全国の事業所数の推移と管理者要件との関係でしょう。
事業所数は2018年の4万65件をピークに足元で減少が続いています。2023年は3万7197件。ピークから2868件減ったことになります。
この要因としては、ケアマネジャーの高齢化、経営不振、新規開設数の鈍化などがあげられるでしょう。加えて、開設時の管理者要件が主任ケアマネジャーに限定されていることも、少なからず影響しているのではないでしょうか。
厚労省によると、2021年時点で管理者が既に主任ケアマネジャーの事業所は全体の約80%となっています。ただ、裏を返せば、約20%の事業所の管理者は主任ケアマネジャーでないことになります。
もちろん、2021年からこれまでに状況はもう少し改善しているはずです。ただ恐らく、2027年3月までに全ての事業所の管理者が主任ケアマネジャーになるのは難しいでしょう。
このまま経過措置の延長や規制緩和が行われないと、事業所の閉鎖が更に進んでしまうのではないかと危惧しています。結果としてケアマネジャー不足が一段と深刻化すれば、必要な介護サービスを円滑に受けられない高齢者が更に増える事態を招きかねません。
◆ 管理者研修の新設も一案
そもそも、管理者要件が主任ケアマネジャーに限定されていることへの疑問もあります。
主任ケアマネジャー研修では、主に現場の指導者を養成すべくスーパービジョンの研修が繰り返し行われています。一方で、私の記憶では、管理業務に関する実践的な研修が行われることはほとんどありません。
恐らく、居宅介護支援事業所の管理者を務めている主任ケアマネジャーの方々の中には、実践的な研修を受けないまま、今も手探り状態で管理業務を担っている方も多いのではないでしょうか。
2021年度の管理者要件の見直しは、居宅介護支援のサービスの質を高める観点から必要だったと思っています。ただ、事業所数が減り続けている現状を鑑みると、ここで再考する必要があるのではないでしょうか。
例えば、管理者要件を主任ケアマネジャーに限定せず、新たに別の管理者研修を創設する案も考えられます。その受講者を管理者として認めていけば、事業所数の減少を食い止めることができるかもしれません。
もっとも、居宅介護支援事業所にはやはり、新任のケアマネジャーを教育・指導するための主任ケアマネジャーが必要だと考えます。これは、「特定事業所加算」の主任ケアマネジャーの配置要件を維持することにより、積極的に配置する事業所が一定数担保できるかと思います。
◆ 包括のあり方も大きな論点
このほか、地域包括支援センターで主任ケアマネジャーが十分に確保できないという課題も顕在化しています。国は配置要件の弾力化を図っており、これから各地域でどんな具体策が進められるかが大きなポイントとなるでしょう。
また、地域包括支援センターの主任ケアマネジャーの役割には、居宅介護支援事業所のケアマネジャーをサポートすることも含まれるのですが、地域によっては、居宅介護支援事業所の方が主任ケアマネジャーの配置が充実しているという矛盾も生じています。これは構造的な課題で、今後こうしたケースが増えていくと予想されます。
地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の主任ケアマネジャーの役割・関係をどう考えるか。これも論点の1つとなるでしょう。主任ケアマネジャーの更新研修のあり方についても、更なる検討が必要だと考えています。
主任ケアマネジャーだけを取り上げてみても、なかなか書ききれないくらい様々な課題があります。引き続き、国の検討会の動向などを皆さんと注視していきたいと思います。