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2024年10月8日

【天野尊明】目前に迫る衆院選! 「介護と政治」を考える機会に

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《 介護人材政策研究会・天野尊明代表理事 》

世間を賑わせた自民党の総裁選を経て、石破茂内閣総理大臣が誕生しました。石破首相は早々に衆議院解散の方針を打ち出し、10月27日投開票で総選挙が執り行われる予定です。


このようなタイミングですので、今回は「介護と政治」の関係について触れてみたいと思います。【天野尊明】


◆ 介護関係者の責任


まず介護業界では、特に公益性を重視する社会福祉法人の一部を中心として、「政治と関わるべきではない」という考え方が根強くありました。


広く国民の尊厳や自立を支えるべき福祉の主体が、何か生臭い利権に関与すべきではないというような、そんなニュアンスでしょうか。最近ではずいぶん影を潜めたものの、いまだにそうした主張を耳にすることもあります。


当たり前のことですが、我が国の介護事業の根幹と言うべき介護報酬は、介護保険制度という法律により成り立っています。筆者も含めて介護関係者は、その運用に関わる行政、すなわち厚生労働省や自治体(保険者)との関係性を重く捉えています。


一方で、法律に基づき運用される制度に大きな影響を及ぼすものとして、法改正などを通じて制度の方向性を決定する場=政治(立法府である国会)もまた、欠かせない存在であることは言うまでもありません。


法律に基づく事業に携わる以上、その問題点や課題を行政だけでなく政治にも届けていくことは、生臭いどころか、むしろ現場の実態を詳しく知る者として、介護関係者の果たすべき責任であるとさえ言えるのではないでしょうか。

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◆ 衆院選は大きなチャンス


ここまでは建前ですが、介護関係者が政治に正しく関わるべきであるという背景には、もっと現実的な事情があります。それは政治(国会議員)と行政(厚生労働省)、国民(介護関係者)の“じゃんけんのような関係性”です。


行政は国民に強く、政治に弱い。政治は行政に強く、国民に弱い。国民は政治に強く、行政に弱い。


あえて乱暴な言い方をすると、介護事業者は事業を進めるうえで、厚生労働省の影響を強く受けます。一方、厚生労働省の官僚は、国会審議を円滑に進めていく必要があるため、国会議員の理解を得なければなりません。そして国会議員は、有権者である介護関係者の意見を無視することができません。


すなわち、(これを生臭いというのかもしれませんが)我々国民の立場からみると、制度を国民視点のものへと導こうとするならば、関係省庁に影響力のある国会議員をいかに味方につけるかということを、手段の1つとして考えざるを得ないというわけです。


そのことにダイレクトに関係する機会が、この度の衆院選です。介護関係者の皆さまには、与党・野党に関わらず、ぜひ介護の味方になる政治家を選び、ときに応援することを通じて、この機会をより良い介護の未来へとつなげていただきたいと願ってやみません。

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◆ 誰が動いてくれるのか


最後に、その際の「政治家の選び方」に触れたいと思います。これは簡単ではありません。


数年前、いわゆる厚労族とされるある与党国会議員と話す機会があり、今でいうケアマネジャーのシャドーワークの問題について、筆者から提起しました。その国会議員の返答はなんと、「それならケアマネの研修をもっと増やさないといけないな」というもの。筆者は気絶しそうになりながら、「厚労族だからといって無条件に応援できるものではないなあ」と感じたものです。


彼らは政治家ですから、これだけ少子高齢化の問題に直面している我が国の介護分野の厳しさを話せば、みんな分かったふりをするでしょう。しかし、実際に介護のために行動を起こしてくれるかどうかは別の話です。


皆さまのご地元の政治家が日頃どのような活動をして、介護をはじめとする社会保障のためにどれだけ汗をかいているのか。この機会にぜひ、皆さまの目でしっかりと確かめ、投票に反映させていただきたいと思います。


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