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2024年9月9日

台風でも自転車をこぐ訪問介護 ヘルパーの安全が最優先 事前の備えで利用者を守れ=黒澤加代子

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《 日本ホームヘルパー協会東京都支部・黒澤加代子会長 》

地震や台風などが多く発生しており、日々の生活が自然災害と隣り合わせになっていると感じます。介護現場の皆さまも、職員を守る、ご利用者を守る意識を高めているところではないでしょうか。【黒澤加代子】

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なかでも先日の台風10号への対応は、東京都で活動している私たちにとっても緊急時の備え、シミュレーションなどを改めて考える機会となりました。


BCPなど一定の計画・方針があったとしても、被害を最小限に抑えるための考え方や迅速な意思決定は難しいものです。その時その場面によって、事業所ごとに判断が分かれるところではないでしょうか。


◆ 暴風雨の中で必死に…


私たちが運営している訪問介護は、ホームヘルパーがご利用者宅へ行ってはじめて報酬が発生します。例えば通所介護のように、ご利用者が来てくれて報酬が発生する形とは異なります。


台風などで自動的にお休みになることもほとんどありません。これはコロナ禍も同様でした。訪問介護の提供が止まってしまうことは、ご利用者の最低限の生活に支障をきたすことを意味すると自負しています。


そのためヘルパーは、いつも身を粉にして死に物狂いで働いています。私たちサービスの担い手は、訪問介護がご利用者の生活の基盤なのだと強く実感しています。


ゆえにヘルパーは、災害と最も近く接せざるを得ない職種の1つと言っても過言ではありません。


東京都をはじめ都市部では、一般的に自転車を使ってご利用者宅を回ります。例えば台風などの際は、生身の体に直に暴風雨を受けることになります。


突然の大雨でずぶ濡れになるだけでなく、目の前が真っ白になり非常に危険です。道路は川のようになり、ハンドルをとられるため通行はままなりません。雨が上がって突然カーッと晴れ、雨合羽が一気にサウナスーツのようになることもあります。


強い風も脅威です。特に団地やマンションの狭間の突風は、自転車が煽られて転倒する恐れが強いです。


ましてや高齢のヘルパーさんに無理をさせるわけにはいきません。貴重な人材が怪我をしてしまってはもともこもないです。

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◆ やむを得ない苦渋の選択


そんな中での訪問ですから、先日の台風10号の際も、弊社ではヘルパーの安全の確保を優先して調整対応させて頂きました。


もちろん、ご利用者の生活を支えることが大切なのは言うまでもありません。台風の影響はどのくらいか、常に最新の情報をメディアで確認し、事業所内でタイムリーに検討しながら、担当のケアマネジャーやご家族・ご利用者に相談させて頂きました。


通所介護の事業者からは、「台風の影響で時短となり早めに帰宅します」というお知らせが来ましたが、必ずしも十分に対応することはできませんでした。慢性的な人材不足でシフトに余裕はありません。当日の急な時間変更に対応できるキャパシティは、大変残念ですがないのが現状です。


ちょうど4月の介護報酬改定を機に、重要事項説明書などで災害時の対応について改めてご説明したこともあり、ほとんどのご利用者・ご家族は事業所の考えをご理解して下さいました。


ただ、「それはヘルパーさんの都合でしょう」と冷たく言われてしまったこともありました。ヘルパーの安全が優先、その中で最大限の努力をさせて頂きたいと重ねてご説明し、なんとかご了承を得ています。


ヘルパーに万が一のことがあったら、当面はそれまでのように訪問できなくなってしまうでしょう。サービスの継続すら危ぶまれる事態に陥ります。苦渋の選択ではありますが、やはりどうしても致し方ない判断ではないでしょうか。

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◆ 得られた教訓を活かそう


今回の台風10号を通じて、平時からの備えの重要性を改めて認識することができました。日頃のケアマネジャーとの連携、ご利用者・ご家族との良い関係性の構築が、有事の際に問われてくると感じています。幸い、東京都内では大きな被害が生じませんでしたが、今後の対策を考えるうえでも良い教訓を得られたと思います。


当たり前ですがヘルパーも人間です。自然災害や感染症を前に勇敢な人だけではありません。私だって必死です。管理者としては、ヘルパーごとの災害時の対応、判断も必要だと痛感しています。いつも果敢に訪問してくださっているヘルパーさんには感謝しかありません。


そして、難しい判断を迫られる管理者の皆様には「お疲れ様です」と心から思います。備えあれば憂いなし。今の人員体制では限界もあると思いますが、私は後から「大事に至らなくてよかったね」と言い合えるような備えをしていきたいと思っています。


今年度からは、全ての事業所・施設を対象としたBCP策定の義務化が適用されています。書類を揃えるだけにとどまらず、これまでに得られた教訓などもできるだけ反映させる形で、より実効性のあるものにしていきたいと考えています。


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