ご利用者の家族への支援について、介護保険制度の中で解決できない場合、ケアマネジャーはどのように対応すればよいのでしょうか。【壷内令子】
家族への支援が大切だということは、既に多くのケアマネジャーが理解しているところです。ただ、実際にどこまで踏み込むべきかは悩ましいところです。ただでさえ業務過多になっているのに、家族への支援まで一手に引き受けるのは難しいと言わざるを得ません。
◆ ケアマネジャーが発見する場面が多い
私も現場でケアマネジメントを行っていますが、ビジネスケアラーやダブルケアのご家庭を担当したり、ヤングケアラーや8050問題に直面したりすることがあります。ご利用者を支援する過程で、家族が抱える困りごと、不安、様々な問題に気づくこともしばしば…。
また、国の「適切なケアマネジメント手法」に「家族等への支援」という基本的なケア項目がありますが、その視点からアセスメントやモニタリングを実践する際にも、新たな問題と出会うことがあります。
そこでどう対応するのか。例えば、ビジネスケアラーに対しては、介護離職を避けるための介護休暇などの制度があることを伝えたり、会社への相談を勧めたりすることが考えられます。さらに詳しいことについては、社会保険労務士や労働局などに相談するようアドバイスすることも1つの方法です。
◆ 各種研修との向き合い方
ケアマネジャーが家族への支援について学ぶ機会も徐々に増えています。日々の業務や他の研修、会議などに追われるなか、何かと大変だと感じている方もおられるのではないでしょうか。
例えば今年度から、居宅介護支援の特定事業所加算の算定要件に「ヤングケアラーや障害者、生活困窮者、難病患者など、高齢者以外の支援に関する事例検討会・研修会などに参加していること」が加わりました。
この研修会などは、家族の問題をケアマネジャーだけで解決することを目指すものではありません。そのような事例に対し、どう対処し、どこと連携すればケアマネジャーだけで抱え込まなくて済むのか、利用者の支援がスムーズに行えるか、という視点で考える機会と捉えることが大切です。
また、法定研修には他法・他制度の活用や多(他)職種との連携の重要性を学ぶ過程も含まれています。家族への支援についても、どの機関やどの専門職につなげると良いかを学ぶことができます。
各制度を深堀りする必要は必ずしもありません。広く浅く知って、問題を解決してくれる人や制度、機関を知ることが重要だと考えています。それぞれの制度には、その課題に精通した専門職がいます。その専門職の方々は、私たちの何倍も知識や経験を持っています。「餅は餅屋」ということです。
◆ 家族支援が本来の仕事ではない
実際、ケアマネジャーがどんなに頑張っても解決できないことの方が多いのです。なかにはつなげる機関や連携先がない場合だってあります。それは地域課題と位置付け、行政とともに地域づくりから取り組む必要がある案件だと言えます。
他法・他制度や他機関につなげ、その課題を解決する専門職にバトンを渡す。その道筋をつけることができれば、ケアマネジャーとしての役目は十分に果たしていると言えるのではないでしょうか。私たちケアマネジャーは、何でも解決できるスーパーマンではないのですから。