最低賃金、過去最大の引き上げ 介護・福祉の現場に及ぶ影響は? 有識者から懸念の声も
厚生労働省の「中央最低賃金審議会」の小委員会は24日、今年度の最低賃金の目安を全国平均で50円引き上げて1054円とすることで決着した。【Joint編集部】
引き上げ幅は過去最大。物価高騰の長期化や春闘の賃上げ率などを踏まえ、大幅な引き上げが必要と判断した。
最低賃金は、都道府県ごとに定められる時給の下限額。現在は全国平均で1004円となっている。
今年度の最低賃金をめぐるこれまでの議論では、労働者側が「物価高騰などで生活が苦しくなっている」などと主張。大幅アップの実現を訴えてきた。一方で企業側は、中小企業の経営の厳しさなども考慮して慎重な判断を求めてきた経緯がある。
最低賃金の過去最大の引き上げは、介護・福祉の現場にどんな影響をもたらすのか。
淑徳大学・総合福祉学部の結城康博教授は、「最低賃金が上がれば、分野を問わず全体の賃金水準の上昇につながる。介護職員にとっても朗報で、更なる賃上げにつながるため大いに評価できる」と指摘。「ただ、公定価格の介護分野では事業者が価格転嫁などを進めることもできないため、他産業と比べて賃上げが小幅にとどまる恐れがある。地域差も考慮する必要はあるが、介護分野が競合分野に置いていかれる構図が強まりかねない。激しさを増す人材獲得競争が更に不利になれば、介護分野の人手不足に拍車がかかってしまう」と問題を提起した。
また、全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長は、「時給で働き始めて間もない人を含め、最低賃金で働いている介護職員は少なくない。既に一定のキャリアを積んでいる人の賃金も、最低賃金の引き上げに合わせて上げないと全体の給与体系がいびつになる。このため、最低賃金の引き上げは人件費の大幅な上昇を招き、介護・障害福祉サービス事業者の収益環境は一段と厳しくなる」と指摘。「もちろん介護職員にとっては歓迎すべきこと。政府には事業者に対するサポート、支援策を引き続き検討して頂きたい。賃上げやインフレなどの動向を踏まえ、介護報酬改定の議論もより迅速に、タイムリーに行えるようにしてほしい」と述べた。