【田中紘太】ケアプラン有料化、高まる実現可能性 厳しい目が強まるサ高住の「囲い込み」への対策も
今年度の介護報酬改定が施行されてすぐの4月16日、財務省の審議会が早速、2027年度に控える次の介護改革に向けた議論を始めました。【田中紘太】
これを踏まえ、今月21日に閣議決定された今年の「骨太の方針」にも、次の介護改革の方向性が盛り込まれました。具体策は多岐にわたりますが、今回はケアプランの有料化と集合住宅でのサービスのあり方を取り上げたいと思います。
「骨太の方針」の関連部分を大まかにまとめると、下記のようになります。この「ケアマネジメントに関する給付のあり方」が、居宅介護支援の利用者から新たに自己負担を徴収することを意味します。
介護保険制度について、利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直し、ケアマネジメントに関する給付のあり方などについて、第10期介護保険事業計画期間の開始前までに検討を行い、結論を得る。あわせて、高齢者向け住宅の入居者に対する過剰な介護サービス提供(いわゆる「囲い込み」)の問題などについて、実効性ある対策を講ずる。
※ 読みやすさの観点からJoint編集部が編集・要約。
財務省はより具体的に考え方を示しています。今年5月にまとめた審議会の提言では、介護費の膨張を抑えることの重要性を念頭に以下のように訴えました。
財政審「我が国の財政運営の進むべき方向」
質の高い介護サービスを提供するうえで、利用者の立場に立ってケアプランを作成するケアマネジャーは重要な役割を果たしている。公正・中立なケアマネジメントを確保する観点から、質を評価する手法の確立や報酬への反映と併せて、居宅介護支援に利用者負担を導入することで、質の高いケアマネジメントが選ばれる仕組みとする必要がある。
※ 読みやすさの観点からJoint編集部が編集・要約。
ケアプランの有料化は、財務省などがこれまで繰り返し具体化を強く求めてきた経緯があります。政府も今回の「骨太の方針」で、「次期改革で結論を得る」という前向きな姿勢を改めて打ち出しました。
こうした動きを踏まえ、業界の関係者の間では「次はいよいよ断行されるのではないか」という観測が強まっています。その是非はさておき、私も同じ様に見ています。今の流れに抗い続けるのは、そう簡単なことではないでしょう。
とはいえ、高齢者の負担増につながる話だけに何が起きるか分かりません。今後の政局も大きな影響を及ぼすでしょう。事業者、ケアマネジャーの皆様は、ケアプラン有料化をめぐる議論の動向をこれまで以上に注視し、早め早めに備えていくことが重要だと思います。
◆ 強まる「ホスピス型」包囲網
次に、集合住宅でのサービスのあり方です。「囲い込み」の問題に対する見方が厳しさを増しています。共同通信社が連日、いわゆる「ホスピス型」のサ高住での過剰とみられる訪問看護の提供を報じている影響も、決して小さくはありません。
国は今年度の報酬改定でも一定の対策を講じましたが、まだ十分とは言えないのが実情でしょう。このまま過剰サービスが広く是正されていくとは考えにくい状況です。武見敬三厚労相は今月18日の記者会見で、「今般の報酬改定の影響を検証する。患者の状態に応じた適切な訪問看護がなされるよう、引き続き報酬の中で適切に評価していきたい」と述べました。
また、財務省は今年5月にまとめた審議会の提言で介護報酬について、「関連法人が外付けで介護サービスを提供した方(出来高払い)がより多くの報酬を得ることが可能で、こうした構造が囲い込み・過剰サービスの原因になっている」と指摘。早急に是正策を講じるべきだと迫りました。
実際、集合住宅の利用者のケアプランを作成する居宅介護支援のケアマネジャーが、事業所側から利益優先の中身とするよう指示されることも珍しくありません。
この問題は、公正・中立なケアマネジメントの実践を志すケアマネジャー個人の努力だけでは、十分な解決には至りません。事業者への規制など制度的な対応が必要で、政府もそうした問題提起を多く発信しています。
今後、対策の強化をめぐる議論がより活発になるとみられます。次の介護報酬改定・診療報酬改定でどんな手が打たれるか、こちらも引き続き注視していくべきテーマだと考えています。