何度考えてもこうなる。もし外れたら申し訳ない。
ここに来て、私は2024年度の介護保険制度改正をめぐる大きな論点の1つである「居宅介護支援の自己負担導入」は実施されないと分析する。【結城康博】
なぜなら、国の「介護保険部会」「全世代型社会保障構築会議」「経済財政諮問会議」などでの議論、そして、昨今の内閣支持率の低迷から予測できるからだ。一方、自己負担2割の対象範囲が拡大される可能性は高いと考える。
第1に、2022年6月7日の「骨太方針2022」において、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、能力に応じて…」と明記されたことだ。今回の改正は「能力」負担がキーワードとなりつつある。
つまり、ケアマネの自己負担導入は、一律1割負担もしくは定額制であっても「応益」負担であり、「応能」負担とはならない。いわば低所得者でも高所得者でも、「能力」に関係なく負担が課せられてしまう。
第2に、ケアマネの自己負担導入を強行したとしても、約500億円の財政効果しか見込めない(注)。それよりも、自己負担2割の対象範囲の拡大を最優先に実現すれば、その程度にもよるが、サービスの「利用控え」も重なって財政効果は相当なものである。
(注)目下の居宅介護支援費は約5000億円。一律1割負担となった場合を想定。
第3に、ケアマネの自己負担導入は高齢者層の「負担」が強く実感され、多くの要介護者の反感を買うリスクがある。また、ケアマネの人材不足、業務負担の重さなどが問題視されているため、さらにケアマネの負担が増し不人気職種となりかねない。
なお、大きな議論の1つとなっている要介護1・2の訪問介護、通所介護を介護給付から総合事業へ移行させる案も、実施される確率はかなり低いと考える。なぜなら、全国的に総合事業が上手く機能しているとは言い難く、無理して実施しても財政効果は微々たるものである。逆にシャドーコストを考えれば、通常の政策担当者であれば見送るはずである。万一あったとしても、訪問介護の「生活援助」のみであろう。
私は、今年7月の参議院選挙の直後、次は厳しい介護保険制度改正になると確信していた。しかし、昨今の「物価高」「旧統一教会問題」などの影響もあって、かなり内閣支持率が下がっているため、大胆な改革はできなくなったと判断する。
いくら国政選挙が3年間ないとしても、与党を中心に高齢者の「負担」を伴う制度改正には消極的にならざるを得ない。その意味で、今回は自己負担2割の対象範囲の拡大に絞られていくのではないだろうか。
もっとも、私は、新たな「負担」を伴う改革にはすべて反対である。特に、自己負担2割の対象範囲の拡大は、要介護者、その家族、そして介護事業者にとって、介護保険制度発足以来の危機的状況を招くことになる。ぜひとも、改革の流れを阻止すべきである。