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2024年6月11日

【結城康博】小池都政の介護職の賃上げ、素直に素晴らしい 全国の自治体も続け! 大きな変革のきっかけに

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《 淑徳大学総合福祉学部 結城康博教授 》

東京都内の介護事業所・施設が介護職員やケアマネジャーらに「居住支援特別手当」を支給する場合、都の独自財源による補助金が交付されることになった。【結城康博】


補助金は月1万円、勤続5年目までの介護職員なら月2万円で、一定の条件を満たせば常勤・非常勤も問われない。今回は、この新たな都の制度について考えてみたい。

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◆ 介護職への「特別手当」は英断!


財政的に余裕があるとはいえ、自治体の一般財源によって介護職に「特別手当」を支給することは大いに評価したい。


私は日頃から都内の介護関係者の話を聞いているが、介護職員やケアマネジャーの人材不足はかなり深刻化しているようだ。都内では分野横断的にアルバイトの時給などが高騰。どこも人材不足への危機感を強め、業界を超えた“人の取り合い”がかなり激しくなっている。


このまま介護業界と他業界の賃金格差が顕著になれば、介護職は本当に枯渇してしまう。介護保険制度あってサービスなし、といった事態の広がりも現実味を帯びてくる。今回の都の施策は、賃金格差を埋める意味で英断と言っていいのではないか。

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◆ 周辺自治体は深刻


もっとも、近隣県の事業所・施設は戦々恐々であろう。都に人材を吸収されてしまう懸念が強い。


実際、公共交通機関ですぐ都内へ通勤できる千葉、埼玉、神奈川で働く介護職からは、「よく求人サイトで都内を検索している」と聞く。一般的に介護職の多くは日頃から転職を考えている。これを機に職場を変える人も多いだろう。


また、私の大学の学生にも変化が生まれている。千葉に住んでいる4年生の一部が、都内の事業所・施設に絞って就職活動を行うようになった。


このため千葉、埼玉、神奈川の自治体にも同様の「特別手当」の創設を期待したい。これらの地域の事業所・施設では、新たに拡充された「処遇改善加算」を取っても十分な効果が出ない状況になりかねない。現在、多くの介護職の目は都に向いている。


都のように月1〜2万円は無理なのかもしれない。ただ、たとえもう少し低額であっても独自の予算措置を設けることにより、介護職に誠意を見せる必要がある。財政的に余裕がないかもしれないが、何とか歳出削減などを試みて予算確保を実現すべきだ。そうでなければ、都に近い事業所・施設が一段と厳しい状況に追い込まれてしまう。

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◆ 国の対策は不十分!


今後、こうした現象は首都圏に限らず生じるかもしれない。介護施策に意識の高い首長がいれば、都と同様に一般財源から予算を投じる可能性がある。そうなれば、地域間の不公平の問題が更に顕在化するのではないだろうか。


正直、今年度の介護報酬改定で国が講じた施策は中途半端で残念であった。もはや国には期待できない。そうであれば、今回の東京都の判断が全国の自治体へ波及することに期待したい。


介護職への「特別手当」が普遍化すれば、将来、一般財源ではなく地方交付税の「基準財政需要額」に盛り込む道も開けるかもしれない。そうなれば、介護保険制度の枠外から新たに財源を確保できる可能性が広がる。


今回の東京都の動きは大きい。変革の引き金になってほしい。一部の地域では厳しい状況も生じるだろう。しかし、中長期的に総務省、財務省など「地方財政」の視点でも、介護職の処遇改善の財源を確保する突破口になればと期待したい。


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