【小濱道博】LIFEは新しい次元へ向かう 新システムへの期待と不安
4月10日をもって旧LIFEが終了した。8月1日から新LIFEがスタートする。【小濱道博】
制度が変わったわけではない。システム変更に伴う切り替え作業である。このため5月から7月は、LIFE加算の算定要件であるデータ提出ができない。提出待ちのデータは、8月1日から10月10日までの間に遡って提出することとなる。
また、旧LIFEから新LIFEへのデータ移行にあたっては、職員情報、利用者情報、暗号化キーなどの手作業での移行が必要である。これらのデータの一部が、個人情報であるための措置だという。こうした作業は遅くても7月31日までに終える必要がある。
◆ フィードバック、精度向上でより重要に
新たなシステムでは、旧システムで明らかになっていた集計の不具合も修正されている。薬、誤嚥性肺炎、新規褥瘡発生に関する集計ミスなどである。加えて、集計項目も改善され、重複項目も整理された。ある意味スッキリしたのではないか。
新たなフィードバック票のサンプルも公開されている。これまでのフィードバック票は、全国平均との比較のみで地域特性が反映されていない、という批判があった。また、事業規模なども一律の集計のため、自施設の的確な比較対象とは言えなかった。
新たなサンプルでは、事業所フィードバックについて、都道府県、事業所規模、平均要介護度の各項目を設定できる。利用者フィードバックについても、都道府県、要介護度、日常生活自立度(身体機能と認知機能)を設定できる。様式や機能などの変更も考えられるが、このサンプルを見る限り、格段に使えるフィードバック票に仕上がっているのではないだろうか。新たなフィードバックの提供は10月以降とされる。
ここで問題となるのは、今後の行政の運営指導で指導対象になることである。この3年間、旧LIFEはほとんど使い物にならなかった。そのため、運営指導でもほぼノータッチだった。
新LIFEが使えるようになると、確実に運営指導で指導対象となる。多くの加算には、LIFEの活用が算定要件として位置付けられている。今後は、LIFEのフィードバックの活用記録が重要となってくる。
◆ LIFE活用、いよいよ本格化フェーズへ
旧LIFEシステムは、不十分で役に立たないものであったかもしれない。ただ、制度全体としては大きな意味がある。
介護従事者は、利用者に直接ケアを提供している。利用者の状態を評価したうえで、適切なケアを提供していく役割を担っている。全ての利用者が質の高いケアを受けられるよう、介護従事者は、バーセルインデックスなど共通の評価指標を用いて利用者の状態を評価する必要がある。そして、日々の利用者との関わりを通して把握した情報や計画書などの情報を踏まえ、ケアの改善に取り組むことが大切である。
これをやり続けることで、職員のスキルが確実にレベルアップする。その結果、介護施設全体のケアの質の向上につながる。利用者はより高いレベルのケアを受けられるようになる。
LIFEを上手く機能させるためには、多職種が連携して利用者の状態の改善に取り組む必要がある。多職種連携の最大の課題は、介護業界の慢性的な人材不足だろう。LIFEをうまく活用するためには、同時並行で業務改善、効率化に取り組むことも重要である。新たなフィードバック票の提供が始まると、LIFE活用がいよいよ本格化する。
今年度の介護報酬改定では、期待された訪問系サービスと居宅介護支援でのLIFE加算の創設が見送られた。その要因の1つに、今回のシステム変更があったのではないか。次の2027年度改定で満を持して、訪問系サービスと居宅介護支援にLIFE加算が創設されるだろう。
そのとき、LIFEは新しい次元へ向かう。まずは、期待して新しいフィードバック票の提供を待ちたい。そこに、大きな可能性を感じるからだ。