今年度の介護報酬改定では、特養や老健などの介護施設に「協力医療機関連携加算」が新たに創設された。
入所者の医療ニーズに対応していける体制作りを後押しするインセンティブで、現場の関係者の注目度は高い。ここではその算定ルールを、厚生労働省がこれまでに発出した通知などを基にまとめていく。【Joint編集部】
新設された「協力医療機関連携加算」の目的は、まさにその名の通り。厚労省は「協力医療機関との平時からの実効性ある連携体制の構築」と説明している。
定められた要件は、入所者の現病歴の情報共有や急変時の対応の確認などを図る会議を定期的に開催していくこと。協力医療機関には次の3点を満たしているかどうかが問われる。
協力医療機関の3要件
(1)入所者が急変した場合などに、医師や看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること。
(2)介護施設から診療の求めがあった場合に、診療を行う体制を常時確保していること。
(3)入所者が急変し、入院を要すると認められた場合などに、原則として入院を受け入れる体制を確保していること。
こうした協力医療機関との連携体制の構築は、2027年度から全ての介護施設に義務付けられる。現在は3年間の経過措置の期間。厚労省は「協力医療機関連携加算」の単位数を今年度だけ高くし、現場に早期の対応を促した。以下の通りだ。
協力医療機関連携加算の単位数
◯ 協力医療機関の上記3要件を満たす場合=2024年度は100単位/月、2025年度以降は50単位/月
◯ それ以外の場合=5単位/月
厚労省は報酬改定の解釈通知に、「協力医療機関連携加算」の算定ルールを具体的に記載。会議では特にリスクの高い入所者や新規の入所者を中心に話し合うこと、その定期的な開催が月1回以上を指すことなどを規定した。ポイントを以下にまとめた。
報酬改定の解釈通知の概要
◯ 協力医療機関との定期的な会議では、特に診療を求める可能性が高い入所者や新規の入所者を中心に、情報共有や対応の確認などを行う。毎回の会議で、必ずしも入所者全員の詳細な病状などを共有していなくても差し支えない。
◯ 複数の医療機関を協力医療機関として定めて3要件を満たす場合は、それぞれの医療機関と会議を行う必要がある。3要件を満たす協力医療機関の情報は速やかに都道府県などに届け出ること。
◯「会議の定期的な開催」とは、概ね月に1回以上開催されている必要がある。ただし、入所者の情報を随時確認できる体制がシステムなどで確保されている場合は、定期的に年3回以上開催することで差し支えない。なお、診療を求める可能性の高い入所者がいる場合などはより高い頻度での開催が望ましい。
◯ 会議はオンライン開催も可能。個人情報保護のガイドラインなどを遵守すること。また、会議の開催状況の概要を記録しなければならない。
厚労省は報酬改定のQ&Aでも、「協力医療機関連携加算」の算定ルール詳しく解説。以下のような問答で適切な考え方を明らかにした。
報酬改定のQ&AVol.1
問127|定期的な会議に出席するのはどんな職種を想定しているか。
答え|職種は問わないが、入所者の病歴、健康に関する情報を協力医療機関の担当者に説明でき、急変時などの対応を確認できる者が出席すること
報酬改定のQ&AVol.2
問13|3要件を全て満たす協力医療機関を複数定める場合、定期的な会議はそのうち1つの医療機関と行うことで差し支えないか。
答え|差し支えない
報酬改定のQ&AVol.3
問3|「入所者の情報を随時確認できる体制がシステムなどで確保されている場合は、定期的に年3回以上開催することで差し支えない」との記載が解釈通知にあるが、具体的にどんな場合が該当するか。
答え|例えば、都道府県の地域医療介護総合確保基金の「ICTを活用した地域医療ネットワーク基盤の整備」事業を活用した、地域医療情報連携ネットワークに参加し、介護施設の医師らが記録した入所者の情報などを確認できる場合が該当する。
この場合、介護施設の医師らがそれぞれの入所者の情報などを1ヵ月に1回以上記録すること。なお、入所者の状況に変化がない場合は記録を省略しても差し支えないが、その旨を文書などで協力医療機関へ少なくとも月1回の頻度で提供すること。