介護事業者の倒産が急増 今年9月までに100件 過去最多に コロナ禍で連鎖倒産も
今年の介護事業者の倒産件数が9月までに100件に達したことが、東京商工リサーチが7日に公表した新たな調査レポートで明らかになった。【Joint編集部】
前年同期(51件)の約2倍に急増。このタイミングで100件に至るのは初めてで、年間でも過去最多を更新する可能性が非常に高くなっている。
要因は複合的とみられる。
もともと深刻な人手不足や競争の激化に苦しむ事業者は多かったが、そこに新型コロナウイルスの感染拡大という災禍が起きた。昨年までは頼りになった公的な支援策も、その効果が既に薄れてしまっている。サービスの“利用控え”は以前より緩和されたが、いわゆる「かかり増し軽費」の負担も含め影響は未だ残っている。
今年に入ると国内外の情勢変化により、光熱費や燃料費、食材費などのコストが高騰。人件費の上昇も長く続いており、これらが折り重なって事業者の経営を圧迫している。
東京商工リサーチは現状について、「介護は事業の性格上、価格転嫁が容易でなく、厳しい経営に改善の兆しを見い出せていない」と指摘。倒産がこれから加速していく懸念もあるとし、「デジタル化などコスト削減の取り組みも必要だが、資金繰りが悪化している事業者に新たな投資は難しい。あらゆる物価高を背景にコスト削減へ向けた支援が急務」としている。
介護事業者の倒産件数の推移をグラフにまとめた。これまでの過去最多は、コロナ禍の第1波がきた2020年。昨年は国の手厚い支援策や介護報酬のプラス改定などが奏功し、一時的に減少していた。それが今年、一転して過去最多のペースに戻った形だ。
今年に倒産した事業者は、デイサービスを中心とする「通所・短期入所」が45件で最も多い。次いで「訪問介護」が36件、「有料老人ホーム」が10件、「その他」が9件となっている。原因は「売上不振」が6割超。全体の8割弱は従業員が10人未満と、小規模なところが大半を占めている。
今年は大規模な連鎖倒産も発生し、それが全体の数字を押し上げる要因にもなった。
機能訓練型の通所介護の運営、FC事業などを展開していた「ステップぱーとなー(東京都台東区)」は、グループ含め17社が破産。半日型のデイサービスを特徴とし、M&Aや福祉貸付資金の活用、投資家からの資金調達などで業容拡大を進めてきた同社だが、東京商工リサーチによるとコロナ禍で大きな打撃を受けた。
利用者数が落ち込んで資金繰りがひっ迫。新たな資金調達は限界となり、今年6月に東京地裁への破産申請を弁護士に一任していた。この「ステップぱーとなー」の関連は、さらに10社超が年内に倒産集計に計上される見通しだという。