厚生労働省は22日、技能実習や特定技能などの枠組みで働く外国人に介護保険の訪問系サービスへの従事を認める方針を固めた。【Joint編集部】
日本人と同じく初任者研修の修了を前提とする。外国人を受け入れる事業者に対し、日本の生活様式も含む研修や一定期間のOJT、ハラスメント対策などの実施を求める。集合住宅に併設されている事業所かそうでないかは問わない。
この日の有識者会議で提案した。現行では、利用者の住まいでマンツーマンのケアにあたる難しさなどを考慮し、外国人による訪問系サービスを認めていない。これに対し、人材不足の一層の深刻化にあえぐ現場の関係者らが規制緩和を訴えていた経緯がある。
会合では委員から、訪問介護の基本報酬の引き下げで事業所の体力が更に弱まる懸念があること、既存のホームヘルパーらの負担が今もかなり重いことなどを踏まえた慎重論があがった。
一方で、「そもそも外国人か日本人かだけで扱いを分けるのはおかしい」「外国人の活躍の機会が広がる」といった賛同の声が続出。強硬な反対意見は出ず、有識者会議の臼井正樹座長(神奈川県立保健福祉大学名誉教授)は、「大きな異論はなかった。議論はかなりはっきり収斂してきている」と総括した。
今後、厚労省は有識者会議の取りまとめに向けた調整を進めていく。実際に制度を見直す時期については、「準備ができ次第、順次施行する」と明言を避けた。
会合では、「外国人を単なる日本人の穴埋めの労働力として受け入れることは適切でなく、事業所によるきめ細かな支援が求められる」と強調。外国人を訪問系サービスに従事させる事業者に課す措置として、次の5つを提示した。
(1)訪問介護の基本、生活支援技術、利用者・家族や近隣とのコミュニケーション、日本の生活様式などを含む研修の実施。
(2)一定期間、サービス提供責任者らが同行するなど必要なOJTの実施。
(3)本人の意向を確認しつつ、外国人のキャリアパス構築に向けたキャリアアップ計画の作成。
(4)ハラスメントを未然に防止する対策、相談しやすい職場環境作り。
(5)介護ソフトやタブレットの活用による記録業務の支援、コミュニケーションアプリの導入などICT環境の整備。
こうしたルールを適切に守ってもらうため、厚労省は受け入れ事業者を訪問する指導体制を整備すると説明。外国人の人権擁護やサービスの質などの観点から心配する声があることを踏まえ、これから詳細な制度設計を丁寧に進めていく構えをみせた。