【山口宰】介護のリーダーに求められる5つの力 前向きで持続可能な現場を作るために
新年度に向けて、新たにユニットやチームのリーダーを任されるみなさんも多いことと思います。しかし、介護現場のリーダー育成のシステムはまだまだ確立されていないのが現状です。
「私はリーダーに向いていないのではないか」「どうやってリーダーの仕事をすればよいかわからない」。そんな不安を感じている人も多いことでしょう。
そこで今回は、介護現場のリーダーとなるためのみちしるべとして、求められるコンピテンシーを「5つの力」として整理し、ご紹介したいと思います。【山口宰】
◆ 求められる5つの力
想像してみてください。もし、介護の現場に、誰からも慕われる素敵なリーダーがいて、スタッフたちは最高のケアを目指して楽しく生き生きと働き、「いつかあんなリーダーになりたい!」と思っているとしたら…。
きっと、日々素晴らしいケアが提供され、利用者のみなさんの満足度は非常に高く、利用希望者でいっぱいになるでしょう。スタッフの定着率はとても高く、噂を聞きつけた就職希望者も集まってきます。施設長やリーダーたちは明日のシフトに頭を悩ませるのではなく、よりよいケアやサービスのために全力を尽くせるようになります。そうすればきっと、地域からも信頼される、素晴らしい施設になるのではないでしょうか。
このように、介護現場のカギを握るリーダーですが、チームのメンバーひとりひとりの可能性を引き出し、よりよいケアやサービスを提供していくために求められる力は多岐にわたります。
私はこれまで数多くの介護現場で活躍しているリーダーたちと出会い、ケアのあり方やマネジメントの方法について一緒に考えてきました。その中で、彼らが共通して持っている特性や能力(=コンピテンシー)があることに気づきました。
これらを「介護リーダーに求められる5つの力」として整理し、ご紹介していきます。
(1)人を導く力
みなさんにとって「理想のケア」とはどのようなものでしょうか? きっと、介護の仕事を志したころから、「利用者の笑顔があふれるユニットにしたい」「高齢になってもその人らしく暮らすことができる地域をつくりたい」といった思いがあったことでしょう。
この「理想」を実現するために「ビジョン」を描き、夢を語り、チームが同じ方向に向かって進むことができるようにする力。これが「人を導く力」です。
(2)人を育てる力
持続可能なチームをつくり上げるためには、長期的な視点を持って人材育成に取り組む必要があります。配属されたばかりの新入職員から、中途採用のベテランスタッフ、そして海外出身のスタッフと、多様性に富んだメンバーを育てていくためには、コーチングの理論、OJTや1on1といった具体的な方法論を学び、「人を育てる力」を身につけることが重要です。
(3)チームを動かす力
介護という仕事は決して1人でできるものではありません。チームのメンバーのもっている力をいかに引き出し、チームとして最高のパフォーマンスを出すことができるかが、よいサービスを提供するためのカギとなります。
そのために、リーダーシップの理論やチーム・ビルディングについて学び、「チームを動かす力」を手に入れることが大切です。
(4)問題を解決する力
利用者の皆さんの命を預かる介護の現場では、日々様々な問題が生じることでしょう。小さな問題だからといって見逃してしまうと、大きな危険や事故につながる可能性もあります。何かトラブルが生じたときに、素早く適切に判断し対応するための「問題を解決する力」。これも介護リーダーに求められる力の一つです。
(5)時代を切り拓く力
理想のケアを実現するためには、これまでの介護の世界で「常識」とされていた古い固定観念を打ち破り、自由な発想で新しいことにチャレンジすることが不可欠です。ラテラルシンキング(水平思考)・クリティカルシンキング(批判的思考)といった発想法・思考法や、情報を収集して分析する力、そして何よりも「実行力」がカギとなります。「時代を切り拓く力」を身につけたとき、みなさんのチームは1つ先のステージに進むことができるのです。
◆ 誰もがリーダーになれる可能性がある
リーダーになったばかりのみなさんにとって、「介護現場のリーダーに求められる5つの力」はとても高いハードルに感じられるかもしれません。でも、心配はいりません。最初からこのような力を身につけている人は、1人もいません。
自分を磨き、理想のケアを実現するために前向きに取り組み、「マネジメント」という武器を手にすれば、誰もが素敵な介護リーダーになることができる可能性をもっています。「前向きで持続可能な」介護現場を目指して、一緒に頑張りましょう!
これまでJointの連載の中でも度々触れてきた「介護現場のマネジメント」について、1冊の本にまとめました。「リーダーとしてどう動けばよいか」を順序立てて解説しているので、リーダー初心者だけでなく、ベテランリーダーや管理職のみなさんにも役立つ内容となっています。ぜひお読みください!