訪問介護と通所介護を組み合わせた新たな複合型サービスの具体的な中身が、いよいよ見えてきました。【斉藤正行】
11月6日に開催された国の審議会(社保審・介護給付費分科会)で具体案が示されました。
12年ぶりとなる新サービスの創設には、賛否両論の様々な意見があります。審議会でも否定的な意見、慎重論が多数を占めていました。このため、具体案の中身は保守的なものになったというのが私の感想です。
新サービスの基本の立て付けは、訪問介護と通所介護の組み合わせとなります。将来的には、看護サービスの組み合わせなど複数の類似サービスが創設される可能性もありますが、まずはこの1サービスからのスタートとなります。そのうえで、新サービスのポイントは次の5つです。
(1)地域密着型サービスであり、運営推進会議は6ヵ月に1度の開催が想定されます。
(2)基本報酬は包括払い(要介護度別)が想定されます。
(3)居宅介護支援事業所のケアマネジャーによるケアプランに基づくサービス提供が想定されます。
(4)利用定員は29名以下が想定されます。
(5)人員基準の詳細は未定ですが、訪問サービスについて、有資格者の配置要件となることが検討されています。
いずれも現時点では案の段階であり、最終決定しているわけではありません。ただ、概ねこの方向性で調整されることになると思います。
このうち、(1)から(3)までは当初より想定されていたものです。一方、(4)と(5)は保守的な内容になったと感じます。
利用定員はもう少し拡大されると期待していました。29名以下の場合、通所定員も小規模多機能型居宅介護と同様の18名程度になるでしょう。小規模では採算の確保が難しく、新サービスの事業所開設のハードルが高まることになります。
また、人員基準について、小多機では資格のない職員も訪問サービスを担うことができますが、新サービスでは訪問介護と同様にヘルパー資格を求められる可能性があります。そうなると人材確保が難しくなり、同様に事業所開設のハードルが高まることになります。
今後、更なる検討が進められ、年明けに介護報酬の単位数を含めた全てのルールが決定されます。その中身次第ではありますが、現時点での情報から判断すると、多くの事業者がすぐに新サービスの事業所を開設する流れにはならないでしょう。ゆるやかな事業所数の伸びになるのではないかと思います。
しかしながら、人口減少社会の中、現役世代の急減を迎えるこれからの時代では、1つの事業所が複数の役割を担う複合型サービスがますます重要になります。また、持続可能な介護保険制度を確立していくためには、財源を計画的に見通せる包括払いの仕組みも重要さを増していきます。
こうした性格を持つ複合型サービスは、“新しい介護のカタチ”として位置付けるべきです。事業者は今回の新サービスのゆくえに、これからも注視して頂きたいと思います。