厚生労働省は来年度から介護保険の福祉用具の制度を大きく変える。貸与で使うか販売で使うかを利用者が選べる「選択制」を、次の介護報酬改定で新たに導入する方針を決定した。【Joint編集部】
16日に開催した審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で提案。委員から大筋で了承を得た。現場の関係者らでつくる別の有識者会議で選択制について具体的に議論し、審議会で導入の是非を問う流れを固めていた経緯がある。
詳細なルールは介護報酬改定の前に通知などで示す。今後、その内容を詰める作業を進めていくとしている。
選択制の対象となる福祉用具は、固定用スロープ、歩行器、単点杖、多点杖の4つ。これらは一般的に価格が安い。貸与より販売の方が、例えば長く使うケースなどで利用者の自己負担が軽く済むこともある。給付費を抑制する一定の効果もあると期待されている。
介護保険の福祉用具は、その時々の利用者の状態に合った適切なものを適切な方法で使ってもらう、という観点から貸与が原則だ。販売は例外的な位置付けで、排泄や入浴に用いるなど貸与になじまない一部の福祉用具に限られる。
厚労省は選択制を導入しても、こうした“貸与原則”を覆すわけではないと説明。その理念を引き続き堅持しつつ、「貸与原則の例外の範囲を拡大する」との解釈を示している。
選択制が導入されると、個々の利用者にとって貸与と販売のどちらがベターなのかという判断を、常に適切にできるか否かが非常に重要となる。
厚労省は最終的に利用者が意思決定する決まりとする考えだ。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が、医師やリハビリテーション専門職を含む他職種の見解を踏まえて提案する形を想定。その検討の過程では、サービス担当者会議や退院時カンファレンスを活用したり、ケアマネが医師らへの「照会」で医学的所見を得たりする構想を描いている。
今後、ケアマネや相談員など現場の業務負担にも配慮して詳しい制度設計を進める構え。会合では日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長が、「居宅介護支援や福祉用具貸与の事業所は準備も必要。一定期間の経過措置を設けるなど、選択制が円滑に浸透していくような配慮も検討してほしい」と要請した。