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2023年10月3日

【高野龍昭】ケアマネの人材不足、大きな要因は介護職員との給与差の縮小 早急な処遇改善が不可欠

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《 東洋大学 高野龍昭教授 》

1. 介護支援専門員の人材確保


私は、居宅介護支援の介護支援専門員の実務、管理者の経験があり、介護支援専門員の技術やケアマネジメントのシステムに関する研究も行っています。【高野龍昭】

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そうしたなかで、最近、介護支援専門員の皆さんや居宅介護支援の経営者の方々から、「ケアマネが足りない」「求人を出しても応募がない」という声を聴くことが多くなりました。市町村の職員からも同様の声を聴きます。


今回の記事では、そのことを深掘りしてみたいと思います。


2.有効求人倍率の実態


人材の過不足をみるための客観的なデータのひとつは、有効求人倍率です。これについて、社会福祉・介護・保育などの分野の就業促進・職業あっせんを行っている福祉人材センター・バンクの統計を確認してみました。その結果をまとめたものが次のグラフです。

これをみると、2008年度の介護支援専門員の有効求人倍率は1倍を大きく下回る0.63倍でした。当時は言わば、「人材の供給過剰」といった状況にあったわけです。


ただ、2019年度には2倍を超え(2.15倍)、この時期から上昇傾向が顕著となりました。2022年度には4倍に迫る状況(3.69倍)に至っています。


従来から人材不足が指摘されてきた介護職員や訪問介護員の水準は下回っていますが、この有効求人倍率は実践現場の「求人を出しても応募がない」という声を裏付けるデータです。また、近年の有効求人倍率の上昇の勢いをみる限り、人材不足の状況が急速に拡大していると言ってよいでしょう。


3.処遇・労働の実態


私は、数年前から「介護労働実態調査(実施主体:介護労働安定センター)」の検討委員の委嘱を受けており、介護従事者の処遇に関する調査やデータ分析に直接的に関わっています。 


そこで、その調査結果のデータから、介護支援専門員の処遇について、他の職種と比較しつつ経年変化(2008年度から2022年度の15年分)を確認してみました。


明らかになったことは、


◯ 給与の伸びは介護支援専門員より介護職員の方が大きく、両者の差は顕著に縮まっている。


◯ サービス提供責任者など一部の介護職員の給与は、既に介護支援専門員の給与を上回っている。


といった実態です。これらも、実践現場の皆さんが日頃から口にしている通りのことと言えるでしょう。

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介護支援専門員は、介護・医療などの分野で原則5年以上の実務経験を有する専門職が筆記試験の合格と実務研修の修了を経て資格を取得し、責任の重い職務に従事する職種です。


それにも関わらず、サービス提供責任者や介護職員といった職種との給与差が大きく縮小し、一部では逆転が起きているわけですから、そうした職種のみなさんが介護支援専門員の資格を取って実務に就こうとする動機を損ねているのではないか、と懸念されます。


実際、厚生労働省のデータで介護支援専門員の資格取得者数(筆記試験合格者)を確認すると、2008年度から2017年度までは年間平均約2万6千人であったものが、2018年度以降は同9千人弱に激減しています。これは、介護支援専門員の試験(実務研修受講試験)の受験資格が2018年度から一部厳格化されたことも一因ですが、私は“介護支援専門員と介護職員などの給与差が縮小した”点が大きな要因だと考えています。


給与水準以外についても、介護労働実態調査のデータを経年的に紐解いてみると、次のようなことがわかります。

=平均年齢=


介護支援専門員 2008年度=45.9歳 ⇒ 2022年度=53.0歳(+7.1歳)


介護職員    2008年度=40.0歳 ⇒ 2022年度=46.2歳(+6.2歳)


=勤続年数=


介護支援専門員 2008年度= 6.1年 ⇒ 2022年度= 8.9年(+2.8年)


介護職員    2008年度= 3.8年 ⇒ 2022年度= 6.8年(+4.0年)

介護支援専門員の平均年齢は50歳を大きく超える状況となってきました。経験豊富な人が実務に就いているという良い面もありますが、一方では、若年層を採用できておらず、それが平均年齢を押し上げているとも考えられます。


勤続年数は介護職員の伸びが目立ちますが、これは処遇改善加算などの取得にあたり、キャリアアップの方策を整えることが効果を上げているとみることができます。


ただし、それと同時にこれらの実態は、介護支援専門員の若年層の参入支援や処遇改善が、他の職種と比べて貧弱であることを意味するものとも考えられます。

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4.まとめ ~処遇改善策の必要性~


本稿では、介護支援専門員の有効求人倍率が上昇し、人材不足が顕在化していることを明らかにするとともに、その要因として、給与水準が介護分野の他の職種と比べて相対的な低下を示していることと、平均年齢が上昇し、若年層の採用が進んでいない一面を考察しました。


さらに、勤続年数の伸びが他の職種と比べて相対的に低下していることについても指摘しました。


結局のところ、このような介護支援専門員の人材不足や処遇の水準の低さは、介護分野の他の職種が2009年度以降に様々な処遇改善策(介護報酬上の加算など)の対象となる一方で、介護支援専門員・居宅介護支援がそこから置き去りにされてきたことが影響していると考えられます。


このことは、次の介護報酬改定、更にはそれ以降の様々な人材確保策の見直しの機会に、介護支援専門員を対象とした処遇改善策について、なんらかの対応が不可欠であることを示していると言ってよいでしょう。


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