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2023年9月29日

【介護報酬改定】最重要テーマは処遇改善 基本報酬の引き上げが焦点 加算一本化のポイントは?=斉藤正行

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《 全国介護事業者連盟・斉藤正行理事長 》

次の介護報酬改定に向けた動きが、いよいよ具体化してきています。厚生労働省の審議会では既に数多くの論点が示され、業界の注目度もかなり高まってきているようです。【斉藤正行】

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中でも、昨今の物価高騰や最低賃金の大幅な引き上げなどの情勢を踏まえると、介護従事者の処遇改善は最重要テーマの1つとなります。今回は、この処遇改善のゆくえについて論考したいと思います。


審議会で示された最新データによると、介護職員の賃金は年々、着実に上昇しているものの、昨年でもまだ全産業平均と6.8万円の格差があり、更なる処遇改善が必要だと言えます。


また、処遇改善関連加算(*)についても最新の算定率が示されました

* 処遇改善関連加算=処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ支援加算の3つを指す。

今年度で「処遇改善加算」は93.8%、「特定処遇改善加算」は72.3%、「ベースアップ支援加算」は86.4%となっています。算定率は着実に高まってきているものの、更なる向上につなげる対応が求められます。


このような情勢も踏まえて、次の報酬改定でも介護従事者の更なる処遇改善に向けた取り組みが必要です。


ただこれまでは、処遇改善関連加算による対策一辺倒であったと言っても過言ではありません。引き続き、処遇改善関連加算の拡充・見直しが検討されていくことは間違いありませんが、あわせて、多くの事業者は基本報酬の引き上げを望んでいます。経営基盤の安定なくして継続的な処遇改善を実現することは難しいからです。


長期化しているコロナ禍や物価高騰の影響なども、その経営基盤を揺るがす深刻な打撃を与えていると言わざるを得ません。次の報酬改定では、大幅な基本報酬増が実現するかどうかに注目したいと思います。


仮に基本報酬が大幅に引き上げられたとして、その分がしっかりと介護従事者に分配されることになるのか − 。


そんな懸念の声もありますが、来年4月には報酬改定とともに改正介護保険法も施行され、財務諸表や経営情報の公表が事業者に義務付けられることになります。この情報開示により、事業者の処遇改善の取り組み、労働分配率などを明らかにする仕組みを構築していくことが重要ではないでしょうか。

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◆ 簡単ではない加算一本化


次の報酬改定を全体として上げるか下げるか、その改定率の決定は、年末ごろに予定されています。政治情勢などを踏まえた決断となるため、現時点ではまだ見通しが立て難い状況にあります。


最重要政策は、処遇改善関連加算の見直しとなることは間違いありません。見直しの論点としては今のところ、


◯ 3種類ある加算の一本化と書式の簡素化


◯ 介護職員以外の職種横断的な分配のあり方


◯ 更なる加算額の増額


などが予測されます。詳細な議論はこれからですが、現時点での私の見立てを申し上げます。


まず、加算の一本化については、恐らく実現される可能性が高いと思います。その際に、それぞれ目的と仕組みの異なる3種類の加算の整合性をとり、どのように1つの新加算とするかは大変難しいところです。例えば、


◇ 経験・技能のある職員への評価のあり方


◇ キャリアアップ体制の構築


◇ 介護職員以外への分配のあり方


◇ ベースアップなど月額給与の分配のあり方


などがポイントになります。3種類の加算それぞれの良さを組み合わせた新加算が検討されることになるでしょう。


いずれの形にせよ、一本化が実現した際の大きな問題は各加算の算定率の違いです。先に示した数字の通り、その算定率には20%近い開きがあります。


現在、1つの加算だけしか算定していない事業所でも、新加算を算定できないと職員の処遇はマイナスとなってしまいます。このため、最も算定率の高い「処遇改善加算」を算定している全ての事業所が、新加算を算定できるようにすることが予測されます。従ってその分、給付額の増加にもつながるため、財源をしっかりと確保しなければなりません。


そして、最大の焦点となるのは、居宅介護支援のケアマネジャーに対する処遇改善加算の創設です。ケアマネジャーのなり手不足の問題は深刻であり、新加算の創設が期待されます。


ただし、財源確保の問題からその実現は容易ではありません。今後の議論のゆくえに注目が必要です。


介護業界の最大の課題である人材確保に向けて、各職種の所得を全産業平均に近づけていくことが極めて重要です。次の報酬改定でどの程度進展することになるのか、皆さんもぜひ注視して頂きたいと思います。


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