「適切なケアマネジメント手法について知りたい」。そんな問い合わせが途絶えません。この手法は、来年度から始まる介護支援専門員の改定版の法定研修カリキュラムに導入されます。
ただ実際、この手法の展開範囲は法定研修だけにとどまりません。今後、わが国の高齢者を対象とするケアマネジメント全体に影響を及ぼしていくでしょう。
私たちは適切なケアマネジメント手法とどのように付き合っていけばよいのでしょうか。まず、法定研修への導入状況を確認するとともに、それに向けてケアマネジャーとしてどう準備すべきかを考えましょう。
適切なケアマネジメント手法は、法定研修5課程のうち4課程に導入されます(下表参照)。もっとも、適切なケアマネジメント手法という科目が創設されるわけではありません。現行カリキュラムのうち、主に事例演習のある科目にこの手法が溶け込み、この手法を基にした知識、思考プロセスを踏んで事例検討を展開する仕立てです。
適切なケアマネジメント手法に該当する科目が最も多いのは、実務研修です。この中では、“適切なケアマネジメント手法とは何か”という基礎から学ぶことができます。
専門Iでは、この手法を用い、研修テキストに示された事例で考え方を学びます。専門IIでは自分自身の実践事例を持ちより、この手法を用いて自らの実践を振り返ります。
一方で、主任介護支援専門員研修にこの手法を用いた科目はありません。ここでは、既に自らこの手法を用いて実践できていることを前提とし、新任者や現任者の指導・助言を行うこととなっています。
日本中のケアマネジャーにとって、一様に、この手法は新たに学ぶものということに変わりはありません。
しかし法定研修は、その課程別に、階段状にレベル設定されています。そのため、この手法の基礎を学べるのは実務研修だけなのです。
現任のケアマネジャーは、当然ながら実務研修を再受講することができません。専門I以降の受講者の場合、既に適切なケアマネジメント手法を学んだものとして研修が進められていきます。
つまり、ケアマネジャー現任者は、2024年度以降の法定研修を受講する前に、適切なケアマネジメント手法を法定研修以外の場で学び、ある程度実践できるように準備しておく必要があります。
特に2024年度以降、主任介護支援専門員研修を受講する予定の方は、向こう約10年、法定研修で適切なケアマネジメント手法に触れる機会がありません。その頃には多くのケアマネジャーがこの手法を習得していますし、来たる主任介護支援専門員更新研修では、適切なケアマネジメント手法を踏まえて指導した事例の提出を求められます。これに該当する方々は、特に遅れないように注意を必要とする層です。
今回の法定研修の改定では、法定研修と法定外研修を連動させてケアマネジャーの資質向上を図るべき旨も示されています。地域で行われる研修のテーマに適切なケアマネジメント手法を取り入れ、地域のケアマネジャーがこの手法を学び、皆で一緒にサービス担当者会議、地域ケア会議、事例検討会などで活用し、慣れていけるように準備していけるとよいでしょう。