6月末から厚生労働省の審議会で、いよいよ次の介護報酬改定に向けた個々のサービスをめぐる議論が始まりました。【斉藤正行】
7月10日の会合では、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の1回目の議論が行われています。その内容を確認するとともに、デイサービスの今後の展望、課題、方向性、次の改定に向けた論点などについて論考していきます。
7月10日の第1回目の議論では、デイサービスの現状や課題などを改めて共有するとともに、今後の論点が次のように示されました。
「利用者に必要な日常生活上の機能の向上、並びに自立支援につながる質の高いサービスを提供する観点などから、どのような方策が考えられるか」。
具体的な記述は乏しく、2回目、3回目以降の議論でより具体化されていくことになると思います。ただし、現状や課題として示された内容、参加委員からの意見、国の調査の結果などを踏まえると、今後の論点についてある程度の予測を立てることができます。
まず、デイサービスの収支差率の悪化が顕著であることが改めて示されました。
2021年度決算でみると、対前年度比で通所介護はマイナス2.8%、地域密着型通所介護はマイナス0.6%、認知症対応型通所介護はマイナス4.9%。他のサービスと比べても、大きなマイナス幅となっています。福祉医療機構による調査で、デイサービスの概ね半数が赤字との結果が示されたこともあり、多くの委員から次の改定での報酬増を求める声があがりました。
経営状況が悪化した最大の要因は、コロナ禍による利用控えに伴う収入減にあると考えられます。前回の改定で導入されたコロナ禍の「3%加算」などについて、今の状況の変化を踏まえたうえで、形を変えた継続対応が期待されます。
10日の会合では更に、各種加算の算定状況の最新データも示されました。
まずは新設された「入浴介助加算II」。算定率が各10%前後と低調だったことから、算定要件の見直しなどを求める声があがりました。これは次の改定の論点の1つになると思います。
他にも、「個別機能訓練加算」と「生活機能向上連携加算」は論点になると予測されます。この2つの加算は、昨年度の国の調査結果も踏まえて見直しが行われることになるでしょう。
更には、他のサービス分類も含めた議論となりますが、「LIFEに関連する加算」の拡充、「ADL維持等加算」を含めたアウトカム評価の更なる拡充、認知症への対応強化などが論点になると予測されます。
また、今年度の国の調査では、デイサービスについて「社会参加活動の実施」をテーマとすることが公表されました。地域連携の推進、更には、要介護高齢者の有償ボランティア活動、社会参加活動などの状況調査となり、これが次の改定での考え方の整理につながっていくと思います。
加えて、障害者・障害児との「共生型サービス」のあり方について、何らかの見直しが行われる可能性もあります。
最後に、より中期的なテーマを予測すると、要介護1・2など軽度者に対するサービスの改革が、3年後の法改正の大きな論点となります。併せて、総合事業のあり方についても今後の見直しが想定されています。
このため、保険外サービスの活発化に向けた施策もテーマになっていくでしょう。加えて、介護施設やグループホームなどで先行して議論されている「DX推進に伴う人員体制の見直し」が、いずれデイサービスにも及ぶと予測されます。こうした中期的なテーマが、次の改定でどれくらい議論されるかも注目ポイントの1つです。
デイサービスは前回の改定でも、見直し項目が多かったサービス分類の1つです。次の改定でも、盛りだくさんの見直しが行われる可能性が高いでしょう。今後の議論の動向に注視していかなければなりません。